『ハウスワイフ2.0』読了

「これ、ママだよ」と娘が言ったのは、『ハウスワイフ2.0』の表紙写真、著者のエミリー・マッチャーさん。

ハウスワイフ2.0

ハウスワイフ2.0



思わずギクリとして、「え、え、なんで?ママじゃないよ。誰かのお母さんってこと?え、ママに似てる?なんで?」と慌ててしまいました。なんで子供って、こんなに直感が優れているんでしょう。確かに私も、この人は自分と同類だなーと思っていたのだ。

ちゃんとした書評を書く余裕はないけれど、結論から言うと、結構面白かったです。ただ、この表紙の「キャリア女性の時代は終わった。私たちは会社に使われない新しい生き方をめざす。」というキャッチコピーと、腕組みをするマッチャーさんの写真とから、マッチャーさんが「ハウスワイフ2.0」の代表者で、「ハウスワイフ2.0」を礼讃している本であるかのような印象を持ってしまうのが難である。この本のスタンスとしては、あくまでも「ハウスワイフ2.0」の実態を調査、報告したルポタージュであり、自身も「ハウスワイフ2.0」であるという著者の体験や意見をところどころで含めつつ、最後の最後で真っ当な批判も加えられているのである。読み進めながら、この本は何を言いたいのか、構造はどうなっているのか、そこのところがやや分かりにくかった。原書はこちら。『家庭回帰』。こっちの方が中立的な感じがしてええやん。

HOMEWARD BOUND

HOMEWARD BOUND


表紙のイラストにもある通り、ハウスワイフ2.0のキーワードは「手作り」。子供を産んでからもフルタイムの仕事をバリバリこなす母親世代が結局は疲弊するのを目撃、またアメリカ社会の経済的失速という背景もあって、会社は何も助けてくれないのだ!という絶望感から、高学歴でも家庭に入ることを望み、母親たちがどう手抜きをしようかとばかり考えていた家事に価値を見出す専業主婦が増えてますよー、というお話。

個人によって程度に違いはあるけど、食への不信感から野菜を自分の畑で育てたり、裏庭で鶏を飼ったり、パンを焼いたり、服を手作りしたり、ホームスクーリング(子供を学校に行かせず家で自分で教育)をしたりと、「自給自足」を目指す人が増えている。さらに現代の主婦は従来の孤独な主婦ではなく、ブログやSNSで発信してコミュニティを作り、家事を商売にまでする人もいるというような話もよく出てきました。友人の言葉を借りると、女性がプラスアルファの家事を通して「自己実現」しているという点も面白い。自分にも思い当たる節がありますよねー。

日本の私たちの「母親世代」はいわゆるバリキャリ世代ではなく、どちらかというと専業主婦が多かったように思うけど、それでも電子レンジや全自動洗濯機もない不便だった時代を知っている母なんかは、やはり合理化合理化で、インスタント食品も結構食べた気がするし、「布おむつなんて時間の無駄、当然紙オムツでしょ」みたいな考え方(それも一理あるのだが)だし、往々にして「非合理的で無駄なものは悪」という考えを疑いもなく露呈することがあって、ちょっと違和感を覚えることがある。そんな母も、子育てが完全に終わった昨今は、「丁寧な暮らし」に憧れているような節が見られることもある。いまだに裁縫はやらないが。料理も元々下手じゃないけど、子育てが忙しいという理由で「楽なもの」を優先していたように見えたが、最近は昔より、多少「面倒くさい」ことを厭わず美味しそうな物を作っているように見える。

ハウスワイフ2.0のやっていること-家庭菜園やら、田舎暮らしやらの「手作りライフ」ーは、今の社会全体の流行りでもあって、「女性」という枠組みだけでは捉えられない問題であると思った。いわば、合理化批判、といったところか。